木の本棚 Wooden Bookshelf; 004

船の模型の作り方

この本は今でも手に入るかどうか分かりません。私(研二)のルーツ本の1つです。イラストレーターの著者が、その模型づくりのノウハウを公開、船への愛情を詰め込んだ本。貴重な写真や図面も満載です。

中学の時、船が大好きで、毎週末神戸港や大阪港に通って船の写真をとったりしていました。そのころの船好き友達・上田正治くん(通称らっきょ)がお父さんのライカを使っていたものだから、外国の船員たちが「いいカメラだ」「見せてくれ」なんて集まってきました。

中学1年の時には「にっぽん丸」で太平洋を旅することができ、洋上セミナーの講師としてこの本の著者・柳原良平さんが来ておられたのでした。ご存じ、サントリー宣伝部でアンクルトリスを描いた方です。山口瞳さんとの新聞広告も忘れられません。船好きとして鳴らした方で、『柳原良平・船の本』シリーズなどは、小学校の時の私のベストです。図書館で何回借りたかわかりません。モールス信号なんかもこのシリーズで覚えたもんね。

前置きが長くなったけど、この『船の模型の作り方』では、タグボートから戦前の日本最大の客船・秩父丸、コンテナ船、クイーンエリザベス2世号まで、実に多様な船の作り方が紹介されています。素材は紙だったり、木だったり。酒瓶の中に仕込むボトルシップもあります。模型というのは似顔絵と同じで、よく観察してそれを知ることから始まります。模型を作る目で見ていくと、改めて船の1隻1隻の個性に気づき、ディティールの発見があるのです。

著者も書いておられますが、船ほど個性的な乗り物はありません。車のように大量生産ではないし、新幹線みたいになんでも「ひかり号」ってものでもない。1隻1隻が別の名前、別の設計(姉妹船というのはありますが)です。海に囲まれた日本。もっともっと船好きがいていいと思うのに。つまらないフェリー(内装もサービスも最低な船がかつて多かった)の印象ばかり強いのでしょうね。いい船はいいよ〜。


柳原良平 船の模型の作り方 1973年 至誠堂



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