木の本棚 Wooden Bookshelf; 010

庭いらずのガーデニング

家、狭いです。庭、ありません。本屋さんで見つけて飛びついたのがこの本。待ちに待ったコンセプトです。こんな本が山男の出版社から出たことにも驚きましたが。

著者はイギリスBBC放送の番組「園芸家の世界」のプレゼンターだそうで(初めて知りましたが)、さすが本場のアイデアが満載されています。基本的にはコンテナガーデンという寄せ植えの手法を紹介する本で、階段や日当たりの悪いスペースの使い方のアイデアが抜群。「地下室への階段には薄い色の花を下の方に」! ただの花好きにはぜったい書けないですよ、これは。花と暮らしのノウハウが積み上げられてきた時間の厚みを感じます。

またまた余談になりますが、私の一番好きな映画のひとつ『大脱走』に、ドイツ人の空軍捕虜収容所長ハンネス・メセマーとイギリス空軍の捕虜代表ジェームズ・ドナルドとの、こんな会話シーンがあります。捕虜たちは脱走計画がばれないように、収容所でじゃがいも畑を作って、大人しくして見せているわけです。
メセマー 正直言って驚いた。飛行機乗りは紳士だ。こんなに畑を作るとは。
ドナルド イギリス人は昔から土いじりを楽しんでいるよ。
メセマー しかしそれはお花畑だろう。
ドナルド 花は食えんからな。
メセマー それはいい指摘だ。
ドイツ側にも「ほんとはトンネルを掘ってるんじゃないか?」という疑惑があるので、なかなか渋いシーンなのですが、いい大人の男どうしがこんな会話ができるのは、いかにガーデニングが暮らしに根付いているかを示しているようで、とても好きです。一度映画の方をご覧ください。スティーブ・マックィーンがバイクで飛ぶシーンばかり強調されますが、ただの戦争活劇ではありません。そのマックィーンが仲間に「大学では何をやってたんだ、野球か?」と聞かれて「Chemical Engeneering.」と応えるシーンもなかなかいい。おっと、この映画のことはいつかこの「木の本棚」のコーナーで詳しく書きます。


ゲイ・サーチの庭いらずのガーデニング 1997年 山と渓谷社
Gay Search: Gardening Without a Garden, 1997



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