cinema    映画この1本!!

  私「J」が劇場・ビデオ・テレビなどで見た映画について書いています。
 見たい映画しか見ないので、偏った選択になることはご容赦ください。
 ジャンルもバラバラです。


CINEMA6 「Le Fabuleux Destin d'Amelie Poulain」
     (アメリ・プーランの寓話的運命)
  (アメリ)

2001年/フランス 監督/ジャン・ピエール・ジュネ
                       出演/オドレイ・トトゥ/マチュー・カソヴィッツ/リュフュス/
                       ドミニク・ピノン/イザベル・ナンティ 他。

☆☆☆(小さい☆1個付)amelie1
 日本では2000年11月〜現在(今は2002年3月。まだ上映終了する気配は無い。)まで上映され続け、しかも上映館数を拡大し続けている息の長〜い大ヒット作品です。
 パリ発の日本人向けネット・マガジン「OVNI(オヴニー)」 (もちろん日本語版)というのがあるのですが、1年くらい前にそれを見ていたら「話題の人」ということで、このオドレイ・トトゥ(英語読みすると「オードーリー」なんですよね。)の記事が載っていました。「"アメリに会いたい!"と、彼女が主演した映画の主人公が勤めるカフェが大人気!!」という内容でした。「まわりの人を幸せにする主人公アメリ」とも書いてあって、これって日本だけのキャッチ・フレーズではなかったんですね。

amelie3 で、これだけヒットしてたらちょっと見たくなるのが人情。私も見てきました。
よく出来てる〜!というのが第一印象。ディテールがすっごくよく考えられていて、しかもディテール同士がそれぞれまたうま〜くリンクし合っていて、「うまいっっ!!座布団10枚持ってけ〜!」という感じでした。こういうストーリーの紡ぎ方は古〜い名作、私の大好きな「パリの空の下、セーヌは流れる」(1951年/ジュリアン・デュビビエ監督)(ドミノ倒しのように、最後にすべてが繋がるすごい映画!)に似たテイストがあって、かなり好きです。アメリが人のためを思ってする悪戯(私に言わせれば「小細工」)がいくつも出てくるのですが、家に閉じこもっているお父さんを元気付けようと、スチュワーデスの友人に頼んで実家の庭に作られた亡きお母さんのほこらの上に乗せてあった白雪姫の小人の置物に世界中を旅させて、行く先行く先で写真を撮りお父さんに送りつける悪戯は、すっごく好きでした。あと、定期的に駅の自動証明写真を撮りに来て、必ず写真を捨てて帰る謎の男のエピソードとか、想像がふくらむふくらむ!ただ、嫌やなーと思った悪戯もあって、それは死に別れた夫からの「届かなかった最後の手紙」をアメリが偽造してアパートの管理人の女性に送るところと、いつも従業員の青年をいじめる八百屋の主人の家の合い鍵を勝手に作って出入りし、こっそり色々な罠を仕掛けて帰るところ。ここはちょっと陰湿なものを感じました。そういうカラーの映画なら全然違和感は無いはずの部分なんですけどね。

amelie2 ではここらで減点材料を挙げておきます。
 アメリの可愛さ(でも22歳という設定はちょっと...)・映像・美術・音楽、どれをとっても圧倒的に素晴らしいのですが、なんか物足りない。この映画のお話自体が「なんてことない」話でしかないからなんでしょうね。「内気なアメリが現実の世界に一歩足を踏み出すまでのお話」にしては、映画の最後にアメリの未来を予感させてくれるわけでもなし。「パリの空の下、セーヌは流れる」のエピソードはどれも「人生」を感じさせましたが、「アメリ」のエピソードは内容もかなり少女趣味というか「甘い」ものがほとんどで、もう少しアメリのエキセントリックな面が彼女の危うさとして出ていればなー、と私の好みとしては思いました。その方が最後にやっと恋するニノと想いが通じた時により一層「良かったねー」と思えたと思うけど。いや、思わないかなー?ははは...(私にはニノのどこがいいのかわからないの。)

 このジャン・ピエール・ジュネ監督の作品、私は「デリカテッセン」(1991年/ジュネ&キャロ監督)しか見てませんが、今回の「アメリ」はこの「デリカテッセン」の延長にある作品だと思いました。全体の色味や、アパートの中のいくつかの部屋で繰り広げられる小さな奇妙な出来事の積み重ね。「デリカテッセン」もあるアパートを中心にした「ディテールの映画」でした。「デリカ・・」は共同監督としてマルク・キャロという人がいて、その人の色が「荒廃した近未来のパリ。人肉を食う人々。」という設定上の特徴として出ていたのではないでしょうか。このふたりは「エイリアン」シリーズも1作撮っているんですね。なるほど。でも正直言って、私はこの映画のストーリーは皆目覚えていません。きっとお話よりもディテールに目が行ったからでしょうね。残念ながら「アメリ」も数年後には私の記憶からは消えていると思います。よく出来てておもしろかったんですけどねー、すみませんねー!っていう感じです。

 でも最後に。よ〜く冷静に考えてみて下さい!このアメリという女の子、犯罪すれすれのことをやって他人の心にずけずけと入り込んで人を騙してぬか喜びさせ、名前も知らない奇妙な青年に熱を上げる「痛〜〜〜〜〜い」子なんですよ。回りにいる人も極端にズレてる人ばっかり。そういうことって、この映画を見てる時にはあんまり考えなかったんですよね。ものすごく変なくせにやっぱり愛らしいんですよね、アメリ。ああ!そういう意味では今回はジュネ監督にやられましたぁ〜〜。

(アメリ役には最初エミリー・ワトソンの名前が挙がっていたそうですよ。とんでもな〜い!もっと狂っていて凶暴でドロドロした映画になってたかもね!そっちの方が好みですけどね私は。)


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