cinema    映画この1本!!

  私「J」が劇場・ビデオ・テレビなどで見た映画について書いています。
 見たい映画しか見ないので、偏った選択になることはご容赦ください。
 ジャンルもバラバラです。


CINEMA2  「GO」
2001年/日本 監督/行定勲 原作/金城一紀 脚本/宮藤官九郎
         出演/窪塚洋介/柴咲コウ/山崎努/大竹しのぶ 他。

2☆☆☆☆☆(☆は五つだ!!!スゴイ!)
 2001年度。日本映画の賞レースで、軒並みNo.1を獲得している「スーパー・在日・青春・恋愛」映画の登場です!!
 ストーリーは説明した方が良いんでしょうか?いえいえ!この映画はストーリーを語っても「へぇ。そう。民族問題ってよく解らへんから...。」と言われるか、「ああ。学園恋愛もの?」となるか、どっちかだと思います。ではどんな話なのか?このふたつの返答はどっちも正しくて、でもどっちもこの映画を正しく言い当てていません。この映画の本質は、あらゆる境界を越えて前向きに生きる「パワー!」なのです。パワーは説明言葉では表現できません。

 主人公は在日朝鮮人二世の高校生、民族学校始まって以来のバカということで、「クルパー」と呼ばれている「杉原」(=窪塚洋介)。「広い世界が見たく」なり、今は日本の高校に通っている。彼の恋愛と親子関係と友人関係を中学から大学進学まで、描いています。metroこの「杉原」、映画の初っぱなから全力疾走で「逃げ」「飛び」ます。まずは警察をからかってパトカーに追われ、「スーパー・グレート・チキン・レース」(地下鉄の線路に降りて到着する電車と競争し、電車にひかれることなく逃げ切れば勝ち。このロケには神戸市営地下鉄・上沢駅が使われました。)で電車と競争して「逃げ」、バスケットの試合中「在日!」と罵った相手に「跳び」蹴りを食らわせ、喧嘩相手のパンチも先生の拳も軽く「かわし」て現在喧嘩は24連勝中(杉原の父=山崎努、はかつてボクサーだった。杉原はその父に鍛えられている。)、付き合っている「桜井」(=柴咲コウ=CM「私ファンデーションは使ってません!」の女の子。)と行く深夜の小学校の校庭の門扉も軽く「飛び越え」て出入り。桜井はそれを見て「カッコイイ!もう1回やって!」と褒めます。

 ...ここまで読んでも何のことか解らないって!?
だから、「越」えたり「走」ったり「逃」げたりする映画なんですよ!それ以上何か語っても、映画には関係が無いんです。う〜ん。これ以外のキーワードは「継ぐ」ということでしょうか。「杉原」が受け継いだものは色々有ります。朝鮮人としての消えないルーツ。父の世代が果たせなかった願い。志半ばに亡くなった親友の夢。映画の最後で、「杉原」はそれらを真っ向から受けて立つ気になるのでした。
とにかく出演者の演技が全員すばらしく(特に山崎努!!)、それはなぜかというと、無駄な人物がひとりも登場しないから!全員が必然性をもってスクリーンの中に存在しているのです。これは脚本の勝利でしょう。素晴らしいです!でも、こういう誉め方をしても、ちっとも本質的なことに至っていない気がします。とにかく見て下さい!それしかこの映画の良さを伝える方法はありません。ただひとつ言っておくと、このような在日韓国人を主人公にした映画では、日本人とその社会に存在する在日外国人に対する差別と対決する姿こそが描かれるべきだ、と考えている方はきっと「これはウソだ!実際はこんなものではない!」という感想を持たれると思います。それに対して、私は間違いだとは思いません。でも、この作品は「プロパガンダ」を目的としたものではなく、もちろん差別と闘っている人々を揶揄するような内容でもない、純粋に「エンターテイメント」の映画なのだと私は解釈しています。
(尚、この作品は2001年度の米国アカデミー賞・外国語作品賞部門の、日本からのノミネート作品になっています。今のところ本選の選考には残っているらしいので、ひょっとするとひょっとするかも...!?見てない人は、ビデオでもいいから見るべし!!これを見ずして何を見るか!!)
 (※残念!ひょっとしませんでした。(・_・、)2002年3月アカデミー賞発表済。)

 最後に。
映画の冒頭にも引用されていた、杉原の親友「ジョンイル」が貸してくれた本「ロミオとジュリエット」(シェイクスピア)の一節です。

「名前ってなに?バラと呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのまま。」


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