cinema    映画この1本!!

  私「J」が劇場・ビデオ・テレビなどで見た映画について書いています。
 見たい映画しか見ないので、偏った選択になることはご容赦ください。
 ジャンルもバラバラです。


CINEMA5 「Harry Potter and the Philosopher's Stone」
(ハリー・ポッターと賢者の石)

2001年/アメリカ 監督/クリス・コロンバス 原作/J.K.ローリング      
               出演/ダニエル・ラドクリフ/ルパート・グリント/エマ・ワトソン/
                  リチャード・ハリス/マギー・スミス/アラン・リックマン/
 ロビー・コルトレーン 他。

hp_letter☆☆☆ この作品は言わずと知れた、2001年〜2002年にかけて日本映画「千と千尋の神隠し」(=2002年2月ベルリン映画祭で金熊賞を受賞)と双璧を成した大大大ヒット・ファンタジー映画です。本当のファンの方は原作本から読んでいて今回の映画化に遭遇した、という感じでしょうか?私は原作は1行も読んでいません。なので、純粋に映画として見た感想をここでは書きます。

hp_chess とにかく美術・衣装が良かった!!SFXもとっても良かった。特に「クィディッチ」(魔法使いのスポーツの一種ですね)の場面はよく出来ていました。ハリーと「賢者の石」を狙う悪者(その正体は実は・・)との対決シーンの次にこの場面が長くても、全然飽きませんでした。
 ファンタジーの鉄則は「ビジュアル的に失望するような仕事を観客に見せてはいけない!」ということだと思うのですが、その点でこの映画は100点満点でした。映像にしてこれだから、原作を活字で読んだらもっと想像が広がるに違いないと思います。なぜベスト・セラーなのか、解る気がしました。出てくるキャラクターでは、ハリーをホグワーツ魔法魔術学校へと案内する「ハグリッド」(=ロビー・コルトレーン)が好きでした。口をすべらせて魔法使いの世界の秘密をなんでもハリーに教えてしまいます。ドラゴンを飼いたいと卵を孵しても、ドラゴンを飼うのは禁止だと校長先生に取り上げられてしまい、ポロポロと涙を流します、かわいい。魔法学校の校長先生以下4人は4人全員がすばらしいキャラクター設定だと思いました。特に、どう見ても悪者にしか見えないのに良い先生「魔法薬のスナイプ先生」(=アラン・リックマン)は、続編でも活躍してくれそう。原作を読んでいる方、どうでしょうか?あと気になったことは、劇中に何度か「お兄ちゃんは"ルーマニア"でドラゴンの研究をしてるんだ!」「両親は今"ルーマニア"に行ってるの。」というセリフがあったのですが、「ルーマニア」って魔法使いにゆかりの深い国なんでしょうか???

 というふうに十分楽しい映画だったのですが、残念ながら「ハリー・ポッターと賢者の石」に付けた☆☆☆というのは、ビジュアル面と作品全体のソツの無い仕上がりに対する加点のみとなりました。こんなこと言ったら「大人げな〜い!」と言われるかもしれませんが、薄くて体温低くて軽いんですよ〜!!「ダイアゴン横町」の作り物のセットの方が、映画全体の印象よりもまだ厚くて(熱くて)重いくらいです。原作がこれだけヒットしたのだから、ひとりひとりの読者の持っているイメージを裏切るわけにはいかない!という使命を、制作に関わった人全員が肝に銘じて作ったということはよ〜〜〜くわかります。そしてそれは限りなく成功しているのだろうと推測できるのですが・・・暴言吐いていいですか?「それだけ」なんです。それ以上でもそれ以下でもない。広がりが無いんです。「ファンタジーに、シリアスな作品と同じものを求めるのは間違ってるんじゃないの?」と思いますか?い〜〜〜え!!それこそ大変失礼な言い方です。ファンタジーにも「全て」求めていいんです。ただ求めるものの種類と程度と割合は違ってきますが。それから、お話の根本的な性格についても一言暴言を吐きます。
       「なんでこのハリー・ポッターという子供は、自分の行動に対して何の躊躇も無いの!?」
原作がベスト・セラーになった後、一部の大人がハリー・ポッター・シリーズについて激しく糾弾している、というニュースをいくつか聞いたことがあります。「な〜に大人げないことを!」と私も思っていましたが、もしこの映画に出てくるハリー・ポッターが原作と寸分違わぬキャラクターであるのなら、「この原作はいかんやろ〜!」と私も思います。ハリーは自分が見つけたものではなく、両親・先生が用意してくれたものを「これは君のものだよ。」「これは君自身の力だよ。」と言われてただ受け取り、驚くだけ。ハグリッドが突然やって来た時にも「迎えにきたよ」と言われて案外あっさりとついていってしまう。(ここでついていかなければお話が始まらないんですけどね(^_^;)!)意地悪な従兄弟が魔法で蛇のケースに閉じこめられたり、豚のしっぽが生えた時も「いい気味だ!」と笑っている。「今までずっと僕をいじめてきたんだから、当然の報い!」ということかもしれませんが、こういう躊躇の無さはコワイです。魔法使いではない普通の人間のことを「マグル」と呼んで蔑むし、普通の人間は魔法使いのことを「化け物」と呼ぶし。とっても気分が悪い部分がありました。こういうことって細かいですけど作品に通底する思想そのものなので、映画全体の印象にすごく関わると思います。もし原作がこのような考え方で貫かれているのなら、私は原作が嫌いかもしれません。結局、こういうことを考えさせる余裕を私に与えたということが、映画そのものの弱さなんだと思います。ファンタジーは特に、有無を言わせぬ強引さで見る者をその世界に引きずり込まないとね!!以上、大人げないワタクシの暴言でした。(ハリー・ポッター・ファンの方、私を夜道で襲わないでね!>*0*<)

 余談ですが、原作者のJ.K.ローリングさんは、監督の第一希望として我らが「テリー・ギリアム」!!(「未来世紀ブラジル」「バロン」「12モンキーズ」)を挙げていたそうです。もったいな〜〜〜い!!もしギリアムならスゴイことになってたに違いないのにぃ〜!(「スゴイこと」とは、目茶目茶傑作になってたか、大コケしたかのどっちか。)


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