cinema    映画この1本!!

  私「J」が劇場・ビデオ・テレビなどで見た映画について書いています。
 見たい映画しか見ないので、偏った選択になることはご容赦ください。
 ジャンルもバラバラです。


CINEMA4 「From Hell(フロム・ヘル)」
2001年/アメリカ 監督/アレン&アルバート・ヒューズ   
                      出演/ジョニー・デップ/ヘザー・グレアム/イアン・ホルム 他。

depp_bath☆☆☆☆
 この作品は19世紀ロンドンで起こった連続娼婦殺人事件、通称「切り裂きジャック」が起こした事件の捜査を巡る、王室から娼婦にいたる階級を越えたおどろおどろしい世界を描いています。
 ジョニー・デップ演じるのは、実際に切り裂きジャック事件の捜査を担当した実在の警部アバーライン。映画の冒頭、彼はアヘン窟でアヘンを吸って幻覚を見ています。アバーライン警部はこのアヘンの幻覚の中で事件にかかわるイメージを見て、事件を解決していく「天才警部」という設定です。もちろん映画の中の創作ですよ。そしてジャックの手に掛かり次々に命を落としていく娼婦仲間の中のひとり、アバーラインが心を惹かれる娼婦メアリ・ケリーにヘザー・グレアム。19 世紀ロンドンの闇の世界がうま〜く表現されてます。血のような夕暮れに染まるロンドンの街の遠景から、ぐんぐん下町の暗黒街に迫って行きます。 depp_graham

 この映画はとてもよく出来ていました。美術がとても良かったので、ビジュアル的にも19世紀末の底知れぬ暗さと退廃的な空気がしっかりと伝わって来ます。ジョニー・デップが事件に関する幻覚を見るという設定は変といえば変ですが、画面の幻想的な雰囲気から違和感はありませんでした。アヘンに溺れる理由もちゃんとあるので。
「切り裂きジャック」が誰で、何のために娼婦を惨殺し続けるのか!?その真犯人探しには英国王室がからんでいた!ということになっていましたが、こんな映画作って大丈夫なの???ちょっと心配ですが、それよりも何よりも、このアレン&アルバート・ヒューズという監督はスプラッタ・ムービーを作りたくて仕方ない人達のようで、まず映画会社はそういう「スプラッター」な場面をどうやって止めさせるか、ということに神経を集中していたようです。切り裂きジャックの殺人場面ではきわ際のところで死体の傷を見せないとか、「ああ。もっとちゃんと撮りたかったんやろなー。」という箇所がいくつもありました。
(私としては、そういうのは見たいと思わない方なので、そういう場面を見せられずに済むのならその方が有り難い。実際、切り裂きジャック事件の本物の検死記録を元に、被害者が受けた傷の正確な場所、長さ、深さも再現したダミー人形をちゃんと作って撮影しているのです!それは映したかったでしょうね。)
この事件には英国王室だけでなくフリー・メイソンもからんでいることになっていて、権力の最高峰にいる人間と最下層の人間が結合してグロテスクにねじれて絡み合っているという、内容的にも視覚的にも真に「グロテスク」な映画です。結局、権力者でありフリー・メイソンの会員であり、自分だけのゆがんだ美学を信仰している人物が真犯人です!!タネ明かしをしないでくれ〜って!?この映画は誰が真犯人か!?ということもまぁ焦点にはなっていますが、それよりも先に書いたような、最初から最後までこの映画を支配している「グロテスクな空気」を存分に吸うことが一番の楽しみ方だと思いますよ。
 唯一気になったのは、娼婦役のヘザー・グレアムがちょっと魅力無かったかなー、ということ。美人だけど、知性がいまいち足りないかも...。あの女の人ならアバーライン警部が惚れてもしょうがないなー、という感じじゃなかったから。(あ!美人だからやっかんでいると思わないでね!!)最重要人物を演じるイアン・ホルムは、私の生涯の映画ベスト3に入る「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム監督 '85年)にも主人公サムの上司として出演していた俳優さん。ジョニー・デップに関してはそりゃもう!言うこと無しです。(一緒に見たともみちゃんが「今回のデップって、ちょっとアフガン入ってたよね〜。」と言う通り、もみあげがイマイチだったかしらん...。)映画の終わり方はあれでよかったと思います。結局、権力の前にはすべてが闇に葬り去られるという...。でも未解決というわけではありません。現実とは違ってね! depp_1

 さて、なぜ私がこの映画を見に行ったかというと、まず前評判が良かったのと、もちろんジョニー・デップが大好きだから!!この人が出る映画はこのようにとてもクセがあって、役柄も奇妙で、でもおもしろい映画が多い。役者としてもめちゃくちゃ上手です。一番有名な作品は「シザー・ハンズ」(ティム・バートン監督作品。エドワード・シザー・ハンズがデップです!)。バートン監督と組んだ作品には他に「エド・ウッド」「スリーピー・ホロウ」があります。が、私が最も好きなデップの作品は「ギルバート・グレイプ」(ラッセ・ハルストレム監督 '93年)!!かのレオナルド・ディカプリオも、デップの弟役で最高の演技を見せてくれています。何度見たかわかりません!(T^T)


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