☆☆☆☆ 『これは真実か!?それとも全部デタラメか!?』 この映画は本当に楽しみにしていたのです。私が大好きな映画監督、テリー・ギリアムの新作!ではなく、ギリアム監督が撮影開始からわずか6日で制作がとん挫してしまった、「完成しなかった映画『The Man Who Killed Don Quixote』のメイキング」映画。それがこの『Lost In La Mancha』なのです。 構想10年。やっと始まる撮影を間近にして、俳優が世界のどこにいるのかわからない。まだ契約すら済んでいない。やっと撮影を開始したら、今度はロケ現場の上を米軍のF16戦闘機が爆音をたてて縦横に飛び回り、撮影スタジオはひどい残響で使い物にならず。そして悪天候。機材は流され、予定していたシーンも撮れず。おまけにドン・キホーテ役のロシュフォールは椎間板ヘルニアで国に帰ってしまう...。始めは盟友ジョニー・デップ(いや、この人やっぱり良いヤツです!)と歓談し、脇の俳優の演技指導に大喜びして無邪気に笑い転げていたギリアム監督の頭上に、どんどんと暗雲が立ちこめてきます。この時ギリアムの脳裏に浮かんだのは、彼の興行的な最大にして最高の失敗作『バロン』(1989年)撮影時に起きたトラブルの数々。さて、映画は無事完成するのか...。 結論から言うと、映画は完成してません。が、映画の最後に「新しい出資者を募って2001年秋にも撮影を再開する。」と言ってましたが...未だに音沙汰が無いとこを見ると、再開できてないんでしょうねぇ。この映画が本当に事実を撮ったものなのか!?という疑問もあるけど、多分最初は完成させるつもりで始めて、間もなく「これはムリや!」と悟った瞬間、ギリアム流悪魔的発想が浮かんで、「完成しなかった映画のドキュメンタリー」という手法が出てきたんでしょうね。転んでもタダでは起きない。一筋縄ではいかないテリー・ギリアム!!やはり侮れません。でもそこがたまらなく良いのです。俳優や美術の人を捕まえては自分のアイディアを喜喜として話す、嬉しくて楽しくて仕方がないという感じのギリアム監督。そのまま年とってジイさんになっていただきたい。 (でも『バロン』という映画、私は大大大好きなんですけど。想像する力が悪夢を追い払い、現実をも変えるという壮大なテーマの、それでいて、ほんっとにバカバカしーい大傑作!ヴィジュアル的にもすんばらしい!!) |