cinema    映画この1本!!

  私「J」が劇場・ビデオ・テレビなどで見た映画について書いています。
 見たい映画しか見ないので、偏った選択になることはご容赦ください。
 ジャンルもバラバラです。


CINEMA3 「La stanza del figlio(息子の部屋)」
2001年/イタリア 監督/ナンニ・モレッティ 音楽/ニコラ・ピオバーニ
                 出演/ナンニ・モレッティ/ラウラ・モランテ/ジャスミン・トリンカ/
       ジュゼッペ・サンフェリーチェ 他。

☆☆☆(なんだか・・)
moretti3 2001年カンヌ映画祭「パルム・ドール」(=最高賞)受賞作品です。お話は、不慮の事故で息子を失ったことでバラバラになり始めた家族が、実は息子には両親も知らないガールフレンドがいた!ことをきっかけに、再び家族としての絆を恢復させて行く・・・というものです。音楽は最晩年のフェデリコ・フェリーニ監督の作品や、数年前にアカデミー外国語映画賞を取った「ライフ・イズ・ビューティフル」(ロベルト・ベニーニ監督)(←私の周辺では妙に嫌われていた作品。)の音楽を担当したニコラ・ピオバーニ氏です。しかしこの映画の中で本当に印象に残るのは、父親が息子へ贈りたいとCD屋の店員に選んでもらった、ブライアン・イーノの「By this river」(男子中学生にブライアン・イーノを勧める店員って...!?)という歌でした。なぜか。

 私はこの映画を見る前からそういう話だということは知っていましたが、実際に見て「本当にそのままだった!!」のでびっくりしてしまいました。数年前に「オール・アバウト・マイ・マザー」(ペドロ・アルモドバル監督)という映画がありましたが、これもまた息子を不慮の事故で亡くした母親が、その死を別れた夫に知らせるための旅(=自らの過去を見直し、未来に生きるための。)に出る話でした。でもこの映画には母親が夫を捜して行く先々で、とんでもない過去が明らかになっていく、盛りだくさんすぎるエピソード(見ていてへきえきするくらい!)が仕掛けられていました。

 そして「息子の部屋」ですが...。何も無いんですね。特筆すべきドラマが。監督はわざと大げさなドラマを避けて通ろうとしているようです。家族関係も、外国人の家族は概して仲が良いから、息子や娘のスポーツの試合に家族で応援に行くのもそんな不自然なことではないし、父親とジョギングする息子も珍しくないでしょう、「友達と約束があるんだ...」と父の誘いを一旦断っても「今度にしろよ。今日はもう少し走ろうぜ!」と父に言われれば素直に従う息子も、まあ家族第一の一家ならそうかもね...。moretti

←私は監督ナンニ・モレッティの作品は初めて見ました。今まで自身の監督作品で監督自身を演じて、虚実(実実!?)ない交ぜの作品を作って来たという話は聞いたことがありましたが、今回の作品を見てちょっと納得がいきました。この映画の中でモレッティ監督は精神科の開業医の役を演じています。何事も無く物事が順調に進んでいる時には冷静で暖かく患者にも家族にも接していますが、息子の死後その死は自分のせいではなかったか!?という自責の念に駆られ、仕事も日常生活も正常に送ることが出来なくなってしまいます。それまで何も考えずに過ごしてきた「当たり前の日常」を、すっかり失ってしまうのです。この精神科医のキャラクターは監督自身なのでしょう。でもまた、息子の彼女(←本当は彼女だったのかどうかもわからない。家族が過剰な思い入れを彼女に対して抱いていただけだった?)に会ったことで、「僕たちは今まで何をしていたんだろう!?」と突然我に返って、自分達の生活を取り戻して行こうと穏やかな決意にたどりつくのでした。非常にリアルです。ところどころユーモアのセンスもあります。最後に夫婦ふたりが恐らく息子の死以来初めて、顔を見合わせてクスクスと笑い出すところなど、「こういうことって、あるある〜!」と共感しました。あまりにも深刻に真剣になりすぎて、物事を悪いようにしか考えられなくなって、「もうあかん...!」と思った時に、まったく次元の違うところから「何やってんですか〜?」と気の抜けた問いかけをされた時のように。

figlio 私はこの作品を褒めようとしてるんでしょうか?これが「良い作品」だということは認めましょう。でも「おもしろかった???」と聞かれたら...。ちょと困りましたね〜。良い作品がおもしろいとは限らないんですよね。最近特にSFXものとかファンタジーものに飢えていて、この種類の「良質な大人の映画」は欲していなかったので。実はこの作品は映画の日に見に行ったので、2本ハシゴするために時間的に合う作品...と探した末に選びました。他にも見たい映画があったんですけど...。いや、そんなこと言ったらモレッティさんに悪いな。(これが息子→)

 最近イタリアって、社会的に不穏な空気が流れていて(現在は2002年2月ですが、連立政権に民族主義政党が参加していて、イタリア国内で外国人排斥運動をやり始めているらしい。)かなり疲れているのでしょうか?EUから脱退するという話もちらほらあるし。ちょっとそんな社会的背景にも思いが及びました。元気出せ!イタリア人!!恋と歌と食の国、イタリアに幸あれ!!(映画の内容とは関係がないか!?)


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