SMOKE

[ク] 薫製
薫製鍋 もう、本を見ないで薫製ができるようになった。というと偉そうだけど、簡単な種類の薫製だけをするのであれば、これが実に簡単なのだ。

道具も最初は、おかきの缶を使ったり、ベニヤで冷薫塔を作ったりしたけど、今はお気に入りの薫製鍋。東急ハンズで8500円で買ってきたもので、底にアルミホイルを敷き、スモークチップを入れて網をおき、下ごしらえした肉をのせる。ふたをして火に掛けるだけ。この鍋不思議なぐらい煙が外に出ないので、マンションの台所でやっても、近所迷惑にならないでしょう。

つけこみ液の作り方や食材の下ごしらえなどは後ほど書くとして、まずは薫製とはなんぞやを簡単に書いておくと、塩づけにした肉や魚に、木をくすぶらせた煙をかけると、その熱で殺菌されたり、煙で表面がコーティングされたりして、少々保存の効く食品になるというもの。いかにもという色と香りがついて、素晴らしい仕上がりになるのだ。

スモークチップとしては北米ではヒッコリー(建材にも使う堅い木ですね)、日本では桜が多い。これをけずった木のミンチみたいなのを、金属の皿に敷き詰めて火にかけましょう。煙が出ます。これに含まれるホルムアルデヒドやアセトアルデヒドが肉や魚に香りや色を与えます。フェノールやクレゾール類が菌の活動を抑えるわけです。香りを加えるのに、リンゴの木や紅茶の葉を加えたり、自分なりのレシピをためすのがいいですね。

この煙を肉を同じ室内に閉じ込めておけば、十分に煙がかかる。これが薫製器です。ゆでたタコの足やゆでたまご、こんにゃくなんかの、さっと香りをつけるだけでいいやという薫製であれば、室内の温度が低くても構わない(冷薫と言います)ので、ベニヤでもなんでも作れます。こんなんでいいのかなというぐらいの工作で大丈夫。火とチップと食品の高さ関係を工夫して、いいサイズを見つけましょう。

一方、生ハムとかスモークサーモンとなると、それなりに熱をかけてじわりと仕上げたいですから、熱薫と言って、室内の温度を6、70度に保ちたい。となると石油缶とか、金属で作ることになります。中華鍋でやった経験では、火が強くなりすぎて、薫製と言うより、単に肉を焼いたような状態になってしまいました。ある程度、火と肉の距離を保って、煙の温度で仕上げたいものです。

では、肉の下ごしらえと行きましょう。
(1)肉を少し洗い、血をとったりします。豚バラ肉を使うとしたら余分な脂身をこそぎ落としておけば、あっさり目のベーコンを仕上げることができるでしょう。
魚なら内臓とエラをとり、血を洗い、腹をツマヨウジかなにかで開いてよく干します。釣具店で売っている青い網に入れて風通しのいい日陰へ。

(2)塩を肉にもみ込みます。殺菌的意味あいもあるので、まんべんなく、しっかりと。肉のヒダの中まですりこみたい。

(3)これを別に用意した液につけ込みます。その作り方は、次の通り、
<つけ込み液の作り方>
肉を浸すのに十分な量の水にけっこうたっぷりの塩を入れます。たまごが中途で浮くぐらい、なんて言います。スプーンで量感を覚えましょう。これを火にかけ、ブラックペパーの粒、ローリエなどをセロリの茎で挟んで糸でしばったブーケガルニを入れます。スパイスはお好みで。別に糸でしばらないでも、お茶っぱパックみたいなのでもいいでしょう。
15分も煮ると、エメラルドグリーンのきれいな液ができます。スパイスを取り出し、ふたをして、そのまま冷ませます。
これでつけ込み液は出来上がり。ビーフジャーキーを作るときとか、好みでウィスキーなんかをあとで足しても気分です。


(4)袋に液と肉を入れてボウルに入れ、冷蔵庫へ。本を見ると「肉と同じ重さの重石をのせておく」と書いてあるのですが、これが難しい。何だ、重石って。ポリ袋に水を入れて重石にするのが一番調節が利くようです。肉がちゃんと浸るように、ときどきひっくり返して、できれば1週間ぐらいつけましょう。キャンプなら一晩袋に入れて、清流にさらしておきます。ただし、クマが出る場所ではしないこと。何が起こってもしらないぞ。

(5)肉を出したら表面を点検。古黒くなっているところはこそげとります。ピチットシートなどで水気をよく切ったら、さて、いよいよ薫製器に。

というわけで、煙をかけたら、出来上がりです。専門家の本よりはずいぶんずぼらですが、まあ、それなりのものができますよ。薫製は元々、保存食というか、猟のむずかしい、しかも傷みにくい冬場のもの。古代、洞窟で焚き火してたら肉も人間も煙臭かったでしょうね。そんなことだから、本格的な薫製は寒い季節や地域のものだと思っておきましょう。蒸し暑い関西では、干してるうちに腐ったとか、ばかばかしい話になりかねません。超高級肉も、薫製には適しません。食べながら「ああ、もったいない」と思わないように。

今年は川魚スモークを完成したいですね。乾かし方がポイントだと思っています。黄金に輝くスモークイワナを食べてみたい! つり上げた方、ご連絡ください!



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