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2002年4月23日 大阪公演を見てきました!

Maurice Be'jart + Be'jart Ballet Lausanne
モーリス・ベジャール&ベジャール・バレエ団

「Le Presbyte`re n'a rien perdu de son charme, ni le jardin de son e'clat.」
「司祭館の美しさはいささかも薄れず、その庭のみずみずしさもまた同じ」
(↑これがこの作品の正式名称です。)

(Ballet for Life)
(邦題:「バレエ・フォー・ライフ」)

<当日使用された曲リスト>
1.It's A Beautiful Day (Queen)
2.Time (Dave Clark, John Christie)
3.Let Me Live (Roger Taylor)
4.Brighton Rock Guiter solo (Brian May)
5.Heaven For Everyone (Roger Taylor)
6.I Was Born To Love You
        (Freddie Mercury)
7.Cosi Fan Tutte (V.A. Mozart)
8.A Kind Of Magic (Roger Taylor)
9.Thamos (V.A. Mozart)
10.Get Down, Make Love (Freddie Mercury)
11.Piano Concerto No.21 (V.A. Mozart)
12.Seaside Rendezvous (Freddie Mercury)
13.You Take My Breath Away (Freddie Mercury)
14.Masonic Funeral Music K477 (V.A. Mozart)
15.Radio Ga Ga (Roger Taylor)
16.A Winter's Tale (Freddie Mercury)
17.The Millionaire Waltz (Freddie Mercury)
18.Love Of My Life (Freddie Mercury)
19.Brighton Rock Guiter solo (Brian May)
20.Bohemian Rhapsody (Freddie Mercury)
21.I Want To Break Free (John Deacon)
22.The Show Must Go On (Freddie Mercury)
(※12.と18.は初演時にもありましたか???)

 モーリス・ベジャールの「Ballet For Life(バレエ・フォー・ライフ)」2002年4月23日大阪公演を見てきました。この作品はテレビで放映された編集版を見たことはありましたが、完全版を生で見たのは初めてでした。

 さて、生の舞台を見ての感想を。
 まずダンサーの体がすごくてびっくり!!みんなギリシャ彫刻みたいな体をしていて、彫像が動いてるみたいでした。フレディーの役(上演中どのシークエンスにもほとんど出ている。象徴的な存在。)はジュリアン・ファヴロウ。この方は近年非常に人気があるそうで、若さと明るさと生き生きした存在感を発散しておりました。が、私が「すごい〜!」と思ったのはやはりジル・ロマンです。この方はジョルジュ・ドン亡き後のベジャール氏のミューズ(男の人の場合は何て呼ぶの?)としてバレエ団をひぱってきたダンサーです。まっ黒の衣装が似合うような悪魔的なところと端正なところを両方持っていて、この方のソロは本当に素晴らしい!!9.Thamos (V.A. Mozart)と14.Masonic Funeral Music K477 (V.A. Mozart)と20.Bohemian Rhapsody (Freddie Mercury)(の後半部分)がそれで、とりわけ14.(フリー・メイソンのための葬送曲!)が素晴らしく良かったです。ジル・ロマンのキャラクターにもぴったりでした。
 ところでQUEENファンである私はそもそもQUEENの音楽が使われているからこのバレエを見に行こうと思ったのですが、音楽はもちろん良かったですよ!いつも思いますが、QUEENの曲には視覚的な強さがあり、色彩やテクスチャーを感じさせるところがあるので、舞台をより重層的にします。ヘタすると踊りが音と解離する可能性もありますが、ベジャール氏はそれを恐れずに作品化して成功させました。これは大変な勇気だと思います。QUEENの音楽とベジャール氏のバレエとどちらが一般的に知られているかというと、答えははっきりしています。それにバレエを見る人の層とQUEENの音楽を聴く人の層とは、まず一致しないと考えた方がいいでしょうし。天晴れモーリス・ベジャール!!
 あと、テレビではカットされていた部分で、Sの文字、Iの文字、Dの文字、Aの文字、と言葉遊びをした後ダンサー達が打ちひしがれた様子で何人もの人名を連呼する場面がありました。後で解ったのですがこれはフランス語で「SIDA(シダー)=エイズ」のことでした。ここでもフレディー役のジュリアン・ファヴロウは「ハハハハハ!」とフレディーの様な乾いた不敵な笑い声を上げていました。こういった「湿度の低さ」がこの作品の救いです。
 15.Radio Ga Ga (Roger Taylor)では一部の人から例の手拍子が上がっていました。私もやろうかと思ったけど、小心者なので・・。それよりも、この時「ラジオ」と思しき「白い箱」の中に「音楽」と思しき「男性ダンサー」がひとりずつ入って行くのですが、これがおかしくておかしくて!次々に入って行ってそれぞれ違う動きで踊ったり箱の壁によじ登ったりしているのですが、それを満杯(「100人乗っても大丈夫!!」)状態でわらわらと繰り広げるのです。箱の外ではふたりのソリストが踊っているのですが、そっちよりも箱の中で起こっていることが気になって、そこばっかり見てました。こういうユーモアに溢れているところは、ベジャール氏とQUEENの音楽とフレディー・マーキュリーに共通する部分だと思います。(上に書いた14.Masonic Funeral Music K477 のジル・ロマンも、シリアスな踊りの後で最後にこやかに手を振りながら舞台の袖にひっこんで行くのです。)

 1曲目から最後まで休み無しで一気に通して、この作品は「あっ」という間に終わってしまいました。とても楽しい作品でした。
カーテンコールではベジャール氏が出てきて、客席は総立ち。何度も何度もカーテンコールは繰り返されました。う〜〜ん。満足。。。

 ところで1997年の初演時、12.Seaside Randez-vous (Freddie Mercury)と18.Love Of My Life (Freddie Mercury)は存在したのでしょうか???
(それとひとつ疑問。この日の客層はかなり年齢層が高く、会社帰りのスーツ着た40〜50代のフツーのサラリーマンや、60〜70代と思われる男性女性が大勢来られていて、こういう人達というのは一体誰のファンなんだろう!?と思いました。間違いなく小林十市ファンのおばさま3人組が私の前に陣取っていましたが(^_^;))



 テレビで見た時「ベジャールの時代はもう終わったかなー。でもこの作品からは、作品としての新しさやクオリティ云々よりも、『これが作りたかった!』というベジャール氏の心の叫びが明らかに聞こえてくる。ひょっとしたら、すごく良い作品かも・・」と思いました。この作品のモチーフになっている、フレディー・マーキュリーとジョルジュ・ドン。私はこのふたりにとても思い入れがあります。ふたりともが私の学生時代の思い出と強烈にリンクしていて、そういう点で作者であるベジャール氏の心境に共感してしまうんです。ドンの死後ベジャール氏は相当落ち込んでいたらしく、そんな時にQUEENが亡きフレディーの遺産を元にニュー・アルバムを出した事実に出会ったことで、自らもドンに対する「喪の仕事」をする気になったのでしょうね。そういう理由って、頭でっかちな批評家がこねくりまわす理屈を凌駕する、重い創作理由だと思います。私は21.I Want To Break Free でジョルジュ・ドンをフィルムではあるけれど堂々と復活させたベジャール氏を、手放しで支持しますね!しかもこの作品は明るいし、間違いなく「人の死」から出発している作品であるにもかかわらず、希望に満ちているし、今ここで踊っているダンサー達がとても輝いていることは尋常ではありません。「死」と「生」の間には、対立や優位性は無く、世界はなだらかに繋がっている。というメッセージを私は確かに受け取りました。

(振付家モーリス・ベジャール氏とそのバレエ団は、アメリカとイギリスではフランスと日本でのような高い評価はされていないようです。が、この「Bllet for Life」に関しては、イギリスではQUEENは国民的バンドであったということで大ヒットしたようです。ただ、観客の熱狂ぶりとは一線を画してバレエの批評家は相変わらず渋い評価しかしていないようです。こういう一般のファンからは支持されるのに批評家には酷評されるところ、QUEENと似てますね!)

 さて、フレディーについては「QUEEN AND ME」を御覧頂くとして。

 ジョルジュ・ドンは、学生時代に見た「愛と悲しみのボレロ」(1981年/フランス/クロード・ルルーシュ監督)という映画でヌレエフを模した親子2代のロシア人バレリーナを演じ、映画のクライマックスであの!「ボレロ」を踊ったのでした。(えっと、、公開当時ではなく、リバイバル上映で見ましたので。一応。)映画を見た当時、仲間内では「ボレロ見た!?ジョルジュ・ドンすごかったねぇ〜!!」としばらく話題になったものでした。その印象が強烈で、ジョルジュ・ドンには思い入れがあるのです。この作品には当時の20世紀バレエ団(ベジャール・バレエ団の前身)のダンサーが総出演し、もちろん振付はすべてベジャール氏本人が行っています。映画そのものは時間的距離的にスケールが壮大で、上映時間も3時間4分という長さ。正直途中でダレます。でも最後のドンの「ボレロ」を見ると「3時間耐えて良かった・・」と思えるんです(T.T)


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