THE MIRACLE
1989/5/22(UK)Released
1.PARTY
2.KASHOGGI'S SHIP
3.THE MIRACLE
4.I WANT IT ALL
5.THE INVISIBLE MAN
6.BREAKTHRU
7.RAIN MUST FALL
8.SCANDAL
9.MY BABY DOES ME
10.WAS IT ALL WORTH IT
 Extra Tracks〜
11.HANG ON IN THERE
12.CHINESE TORTURE
13.THE INVISIBLE MAN (12" Version)

アルバム「THE MIRACLE」について。
 まず、一見してジャケットが不気味です。いや、不気味と言うべきかよく出来てると言うべきか...。しばらく見てると段々好きになってくるのが不思議です。このジャケットが彼らの当時の心境を、そっくりそのまま表現しているからかもしれません。

 それぞれのソロ活動を終えて再び戻ってきた4人が作ったアルバム。このアルバムは本当に好きです。どの曲がどうとかいうのはうまく言えませんが、全体がすごく良い!!特に1.〜2.〜3.〜4.の並びは完璧です!(なぜここで〜5.まで続かないかというと、5.が「ゴースト・バスターズ!」にそっくりだから。初めて聴いた時「なんでQUEENが「ゴースト・バスターズ!」のカバーなんかやってんの!?」と本気で思ったくらい。)6.以降はまた良いんですよ〜。ただ、10.が"ド演歌調"でくどすぎる感じがして、アルバムの終曲としては少し不満が残るかも...。(当時の彼らはこの曲の詞にあるように、「辛いこともあったけど、やって来て良かったよ!」と言いたかったんでしょうね。なぜそういうことをここで歌ったのか、それは後々解るようになるのですが。)でもそんなちっぽけな不満を補って余りあるクオリティです。この前の「THE WORKS」も「A KIND OF MAGIC」も、このアルバムの統一感と集中力には遠く及びません。
 ここには「THE WORKS」のように圧倒的なヒット曲は多く含まれていません。そして歌詞が今までと全然違います。発表する楽曲やステージで、人々が望むイメージとしてのQUEENを演じ始めた彼らでしたが、こと詞については人々のイメージする自分達と、それを体現しようとする自分達の間にあるギャップや困惑をも率直に歌い始めます。なぜそうなってきたのか?このアルバムを作り始めた頃から、フレディーの健康状態が悪化し始めたのは確かなようです。前々からフレディーについては「HIVに感染して、AIDSを発症している!?」という噂が絶えなかったのですが、それが遂に現実のものとなって現れ始めたのでした。フレディー本人がメンバーに対して自分の病気のことを正式にうち明けたのは、このアルバムの制作中という話もあり(フレディーはQUEENのメンバーに自分がHIV感染している事実を話した後、「この話題には二度と触れないように。」ときつく釘を刺したそうです。彼らしいではありませんか!)、どの曲も「頑張れ!」「奇跡はおこるさ!」「諦めるな!」という、まるでフレディーと自分達に対する応援歌のような歌詞ばかりです。自分達自身に降りかかった危機を誠実に曲にして、演じるQUEENのメンバー。それを百も承知の上で歌い、演じるフレディー。ここまで「フレディー・マーキュリー」を演じるフレディー、「QUEEN」を演じるQUEENのメンバーには感服します。このような病気に関する事実を私たちが知ったのはもっと後のことですが、それを抜きにしても素晴らしいです。同じことがフレディーのソロ・シングル「TIME」('86)「IN MY DEFENCE」('86)「THE GREAT PRETENDER」('87)、モンセラ・カバリエ(オペラ歌手)とのコラボレーション・アルバム「BARCELONA」('88年)にも言えます。天晴れです。

 4.を聴いて「フレディーはもしかしたら死ぬんじゃないか!?と思った。」と誰かが書いていました。この曲の尋常ではない力の込め方は圧倒的で、確かに全体を通してそういう奇妙な「予感」がするアルバムです。このアルバムから、曲の作者が「QUEEN」名で統一され、全員が全曲について同じようにかかわっていることが示され、従って売り上げも平等に配分されることになりました。このバンドとしての一体感はなぜこの時に生まれたのか?それもこれも、今となっては解りすぎるくらい解ることとなってしまいました。フレディーはこのアルバムのサポート・ツアーをしないと自ら宣言し、QUEENはすぐさま次のアルバムのレコーディングへと入っていきます。

 まだフレディーがかろうじて健康を維持していた最後の時期に作られたアルバムとして、「やっぱりQUEENは楽しいよねぇ〜。」と軽い気持ちで聴くことのできる、最後のQUEENアルバムです。
 なので、初めて聴く方にはお勧めはしないでおきます。初期から聴き始めて自力で辿り着いて下さい、ここまで。


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