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前回 ON GALLERY (1993年) での個展がとりあえず成功だったにもかかわらず、私はまたまた自信を無くして落ち込んでしまい、その後の4年間を何もせずに過ごしていました。そして1998年10月。たまたま家族が行くというのでくっついて行ったロンドンで、ナショナル・ギャラリーに行き、そこで目を覚まさせられてしまったのです。 そもそもロンドン行き自体に何か私自身の希望があったわけでもなく、「大英博物館とナショナル・ギャラリーとテート・ギャラリーはとりあえず行っとこかな。」くらいの気持ちで回っていました。私はルネッサンス絵画が大好きなので、ナショナル・ギャラリーはその宝庫という感じで、まるで豪華な画集を見ているようでした。ギャラリーの表フロアにダ・ヴィンチの油彩画「岩窟の聖母子と聖アンナ」があって、その後ろの薄暗い小部屋に「それ」はありました。 「聖母子と聖アンナと洗礼者聖ヨハネ」のデッサンです。 ダ・ヴィンチの絵は、それこそ小学生の頃から教科書や色んなメディアで見て「知ってるわ!」という気になっていましたが、実物(油の乗り切ったいわゆるダ・ヴィンチらしいダ・ヴィンチの作品)を見るのは初めてでした。油彩で圧倒された後小部屋に入ると、「ヌッ」という感じで聖母の左膝と右腕が浮かび上がっていました。「昨日描いた」ようなタッチがはっきり見えました。目にした瞬間から「なにこれ!?なにこれ!?なにこれ!?」と心の中でずっとつぶやいていました。何か「霊的」なもの、「人間の業ではない」もの、「圧倒的」なものを感じました。これが500年前の人間が描いたものとは!!完全に打ちのめされてしまいました。そして同時に「"描く"ことでこんな凄いものが表現できるなんて!」と思いました。私はつたないながらも「描く」技術を持っています。ならばやはり「描くべき」なのだと。 あとナショナル・ギャラリーで印象に残ったのは、レンブラントの自画像2点でした。それはまだ若く少し生意気で、でも可能性と自信にあふれている時代のものと、晩年何もかも失って落ちぶれ果てた自分を、残酷なまでに冷静に見つめ描いた時代のもの。対照的な自画像2点でした。そしてファン・アイクの「私は私の最善を尽くす。」と書き込みのある、小さな小さな自画像。彼らがなぜ何百年経ってもずっと名前と作品が残っているのか、実際に本物を見て得心させられました。 それで再び「描く!!」という決意を新たにした約1年後の1999年末(それでも動きだすのに1年かかるのが私のダメなところ...)から、リハビリのつもりで新しい仕事にかかりました。その後間もなくまた人生最大に落ち込むことがあったのですが、どん底でも絵は不思議に描き続けて、やっと個展をするめどが立ちました。この頃に聴いていたのはジャクリーヌ・デュプレ(チェリスト)の「チェロ協奏曲(エルガー作曲)」。(この時ちょうど映画「ほんとうのジャクリーヌ・デュプレ」が公開されていて、なんとなくCDを買ったらあまりに素晴らしくてびっくりしました。)それとマーラーの「交響曲1番」と「9番」。イギリスのバンドTRAVIS(トラヴィス)の「THE MAN WHO」でした。全部暗い...こんな状態が夏まで続きました。 この個展は最初の予定では期間がもう1週間ずれていたのですが、この会期に変更になったため、下の大きい部屋(信濃橋画廊には展示室が3つある。)で、私と全く同時期に石原友明さんという超!有名な作家さんが個展をされていたお陰で、びっくりするような著名な方々が次々とやって来られて、ホクホクでした。(コバンザメのよう...)自分でもある程度の自信はありましたが、見に来ていただいた方の評価も大体良かったし、前回の個展以上に大満足の充実した2週間でした。 (この個展のあと、2001年12月3日(月)〜8日(土)同じく信濃橋画廊で行われた「個のしごと展」というグループ展に参加しました。) |