TOILET ROOM

[ト] トイレ
トイレ 我が家を森にするのに、ベランダとともに面白いスペースといえば、トイレでしょう。個室だけに空間が限られているから、インテリア慣れしていない私たちでも完結的な考え方でコンセプトを立てられる空間です。これがキッチンとなると、ダイニングとのつながり、導線の複雑さから、リフォームなんてことはなかなか難しいことになるでしょう。トイレは導線シンプル、必要調度が明らかということで、遊び壁がはっきりしています。収納したいものも種類や重さが限られているので、棚や調度をデザイン的に発想しやすいのです。重い鍋を重ねて収納しなきゃいけないキッチンでは、あまり繊細なデザインにはできません。

採光が一番いい場所にトイレがあるわけではない。昔からトイレの裏にはヤツデが生えていると決まったもので、日当たりの悪い場所にトイレがあるのが日本の風景です。まあそれはいいんだけど、今時あんまり暗い感じのトイレというのはどうでしょうか。

前に住んでいたマンションに夜遅く帰ったら、妻がトイレにはいつくばっていたことがありました。「どうしたの?」「模様替えしてるの」。壁を白に、周囲の木質部分を青く塗っていたのです。ちゃんと色がはみ出さないようにマスキングテープを貼ってる。さすが絵描きです。その辺はしっかりしてる。でも賃貸マンションです。色を塗っていいわけがない。根本がなっていない。結局、そのままで今の家に越してきました。あのトイレどうなっただろう。

今の家では、トイレはウッディにしたかった。いや、話せば長いですが、今の家は営業マンが「設計を自由にできます」と言ったのが大きな魅力のひとつだったのです。実際、マックのイラストレータで図面を描いて、「ここ窓にしよう」「ここにコンセントがほしい」なんてやりながら、夫婦で描いて営業マンに渡したのです。階段の位置からトイレの位置まで変えてしまいました。収納も変えました。窓なんて、イラストレータだとコピーペーストで窓が増やせるからいっぱい増やしました。強度的に無理ならムシしてくれるだろうとたかをくくって、たくさん窓をつけました。

そしたら描いたとおりに窓があるのです。窓の骨組みまでできた我が家の建て前に入ったときは嬉しかったですね。おかげで今、寒いですけど。やっぱり窓増やしすぎたよな。大工の棟梁には挨拶がてら越の寒梅をぶら下げて建て前に行きました。そしたら無口な頭領が「おお、いい酒やな」とつぶやきました。続けて、「設計、ずいぶん変えてしもたんやな」。若干寂しそうでした。ごめんなさい。

まあこれは余談として、そんなこんなでうちのトイレは私たちが動かしてしまったトイレ。一口で言えば狭いんです。無理な場所にトイレを押し込めてしまった。そこで空間としてはとても退屈な、閉塞的な空間になってしまったのです。で、始めに戻るのですが、うちではウッディな空間にしようということが決まったというわけです。できたばかりの家に引っ越して何をやったかというと、トイレの便座をはずして、さっそく梅田ロフトで買ってきた木の便座をつけました。冬は冷たいけど、いい感触です。木のトイレットペーパーホルダーと、ペーパーストッカー、タオルかけ。電気のスイッチのカバーも木のものにつけかえ。前の家で本棚にしていたきれいな白木の棚板が余っていたので、東急ハンズで棚受けを買ってきて、つけました。飾っている小物は妻の趣味です。ヨーロッパ系中国趣味とでも言おうか。写真を見ていただければ分かるとおり、もう少し収納がほしいですね。次は木質の天袋をつけて、ペーパーとか掃除用品を入れたいと思っています。余裕ができたら強い補助光をつけて、植物一杯のトイレにしたいとか、思うところはいっぱいあります。あと3年ぐらい経ったら、またトイレを見ていただきたいのです。もう少し、森に近づいていると思います。



▲ PREVIOUS INDEX of 50WAYS NEXTPAGE ▼
copyright (c) 1998 ISHII Kenji & Hikaru, all right reserved. Please