THE WORKS
1984/2/27(UK)Released
1.RADIO GA GA
2.TEAR IT UP
3.IT'S A HARD LIFE
4.MAN ON THE PROWL
5.MACHINES(or 'BACK TO HUMANS')
6.I WANT TO BREAK FREE
7.KEEP PASSING THE OPEN WINDOWS
8.HAMMER TO FALL
9.IS THIS THE WORLD WE CREATED...?

アルバム「THE WORKS」について。
 前作「HOT SPACE」の商業的失敗により(?)"再びメンバーがやる気になるまで"の活動休止に入ったQUEENですが、グループ休業中もメンバーは各自の活動をしていて、フレディーはソロ・シングル「LOVE KILLS」(映画「メトロポリス」のサントラに収録。)を発表。ブライアンはソロ・ミニ・アルバムを制作。フレディーとジョンは映画「ホテル・ニュー・ハンプシャー」に曲を提供する準備。ロジャーはモナコで泥酔して逮捕される...と、色々な仕事(?)をこなし、結局は半年もせずにまた全員がQUEENのエムブレムの元に戻ってきたのでした。(この人達は基本的にはお互いを頼りにしていて、普段の人間関係はともかく、音楽を作る上ではお互いが不可欠な存在だったんでしょうね。)そして取りかかったのが、このアルバムです。

 このジャケットの写真は好きかって?好きじゃないです。この濃い影にどうにも嫌〜な印象があります。なぜかわかりませんが不穏なものを感じます。内容的にはシングル・カットされヒットした曲の宝庫で、売れ行き的にはこのアルバムの頃が彼らの第二期黄金期だったのではないでしょうか。このアルバムをあんまり好きじゃない理由は、とっても「大味」であること。POPではあるけれど、繊細さが足りない。かといって力強さもイマイチ。前作の失敗を教訓に、過去の路線に回帰しつつもまだ本人達が納得しきれていない。このアルバムから、QUEENが新しいQUEENを自分自身で切り開いて行くことから離れて、「リスナーが望むQUEEN」を演じ始めたのだと思います。それがちょっと投げやりな感じがする理由かもしれません。「HOT SPACE」の失敗はそれほど大きかったということですね。これからは年を経るにつれて、「QUEENが演じるQUEEN」が「伝統芸能」の域まで発展して行くんです。
 では曲の話もしておきましょう。1.は大ヒットしました!この曲のビデオですごい数のオーディエンスが一糸乱れず頭の上で手をたたくシーンは、この後のQUEENのLIVEでも、あの伝説の「LIVE AID」('85年)でも繰り返されることになりました。3.の出だしはオペラ「道化師」(レオンカヴァルロ作曲)の中の一節です。こんなこと平気でするのはフレディーくらいのもんですね。怖い物知らず?又は熱狂的オペラ・ファン。 6.については、ここをClickして→"I WANT TO BREAK FREE"面白いお話があるので、読んでみてください。この曲のビデオは最高にぶっ飛んでいましたね。7.は先に書いた映画「ホテル・ニュー・ハンプシャー」の為に書かれたのですが、映画にフィットしなかったということでQUEENのアルバムに含まれることになったようです。「KEEP PASSING THE OPEN WINDOWS」はジョン・アーヴィングの原作にもある「開いた窓は通り過ぎろ。」をそのままタイトルにしています。「開いた窓から飛び降りてはいけない。(=自殺してはいけない!)」という意味です。フレディーにしては珍しいメッセージ・ソングです。(この曲を聴いてノエビア化粧品のコマーシャルを思い浮かべる人も多いかも...。かつてのノエビア化粧品CMはフレディーのお得意様でした。)私は偶然ここに書いた映画を2本とも見ていて、どちらも好きな映画です。機会があればどうぞ。2本とも絶対に見て損はありません。8.もメッセージ色の強いブライアンの曲で、80年代に火がついた東欧やアフリカ、南米などに於ける国家や民族の独立運動のテーマ曲として世界各地でヒットしました。こういう聴かれ方が意外に多いのがQUEENの不思議なところです。彼ら自身が持つ(又はフロント・マンであるフレディーが持つ?)「ファッショ」な部分が人々に訴えるのでしょうか?そんな意図は彼らには微塵も無かったはずですが。(しかし彼らはこの年、当時まだアパルトヘイト=人種隔離政策を敷いていた南アフリカに乗り込み、LIVEを行い、世界の音楽界から猛攻撃を受けることとなりました。「LIVE AID」は、この南アでのLIVEに対する最悪の反響を断ち切る為に、彼らにとっては偶然ながら、最高のお膳立てとなったのです。)9.は「LIVE AID」でも歌われ、QUEEN完全復活のきっかけにもなりました。詩の内容も「LIVE AID」の意図するところと完全に一致しており、参加する前年にきっちりこの曲を書いておくところなど、QUEENの運命的な強さを感じます。

 ☆☆☆☆。初めて聴く方へはお勧めしておきましょう。知ってる曲が多いし、とにかくヒット曲の宝庫ですからね!(でもこんなもんじゃないんだゼ、QUEENは!)


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