アウトドアへの招待
ハーブの楽しみ[4]

生活に自然を取り込む
以前、好きだった神戸のスパイスレストランが、サボリというハーブの種を送ってくれたことがあった。あまりマメな性格でないので植物の世話は不得意だ。妻任せにしていたが、ベランダでスクスク育った。
その時まで、ハーブがあんなによく育つものとは知らなかった。
若い葉をサラダにするというので何枚か摘む。翌朝もまた若い葉を摘む。そのまた翌朝もという具合で、ベランダのわずかなスペースに置いたプランターから、よくあれだけの収穫があったものだ。
意外に育てやすいハーブは多い。ミントなどもかれんなルックスの割に育てやすいハーブの代表だ。
ベランダで育てた鉢を、玄関や洗面に置いておけば、それだけで暮らしがフッと豊かになるだろう。
ミントの使い方で面白いと思ったのは、採りたての葉を製氷皿に入れて作るミント・アイスだ。夏などこれでアイスティをいれたり、コップに入れて水をそそぐだけで蒸し暑さを忘れさせるドリンクが出来上がる。
一時期、アウトドアのテーマは「いかに自然の中に都会の便利さを持ち出すか」だった。が、今は、いかに普段の生活の中にアウトドアを持ち込むか、というところに来ている。
それだけ日本のアウトドアも普段着のものへと成熟してきたといえるだろう。
家庭で手軽に楽しむハーブ作りは、そうしたインドア・アウトドアのメニューのひとつ。もちろん外国原産種が多いハーブのこと、失敗も多いだろうが、少しずつやってみることだ。
それで料理、手芸の分野が広がれば、ワンパターン・アウトドアから脱却できるだろう。
1995,6,29
文:石井研二 絵:石井光