スキー[1]

幅広がる雪の楽しみ方
初めてスキーツアーに参加して、バスの中で眠り、目が覚めたときには風景が銀世界に変わっていた。思わず大声を上げてしまったのを覚えている。雪というのは心躍るものがある。
スキーの楽しみも、スノーボードやクロスカントリーなどが人気を呼んで、幅が広がってきた。スキー自体、ただ朝から晩まで滑りまくるのではなく、雪の上でのアウトドアライフを楽しむような、優しい旅に変わってきたように思う。
ありがたいことに、スキー年齢も広がっている。家族連れや、久しぶりにゲレンデに戻ってきた中年グループの姿も多い。スキー産業は不況が続いているようだが、トレンドに踊らされずゆったりと楽しむスタイルが増えているのは喜ばしいことというべきだろう。
一組のスキーの前に子供を立たせ、後に奥さんが乗って、三人でゆっくり滑走する家族など、見ていてほほえましい。もっとも、お父さんが上手でないと、あの滑り方は難しいだろうが。
もうひとつの傾向は、スキーに行く人々の荷物が増えていることではないか。俗にゲレンデ食などというが、相変わらずスキー場の食堂は混雑するし、おいしくもない。それならグループで調理道具を持っていき、見晴らしのいい場所で自分たちで食事を作った方が、時間の融通も利くし、おいしいというものだ。
こういうときにキャンプ用品の携帯性が力を発揮する。せっかく買ったアウトドアギア。夏だけでなく、年中使いたいところだ。
リュックひとつ背負っていけば、好きなときに、好きな景色を眺めながら、雪上パーティーが楽しめる。そこまでたいそうでなくても、シングルバーナーコンロでコーヒーが沸かせさえすれば、スキーライフは一層の輝きをもつに違いない。
私の場合は、まず大きめのウエストポーチに携帯水筒を入れる。中身はもちろん、お気に入りのバーボンだ。
1996,1,11
文:石井研二 絵:石井光