アウトドアへの招待
キャンプ[1]

目的をしっかり定めて
夏休みに入ったらキャンプしようと計画されている家族も多いことだろう。
ホームセンターのキャンプ用品コーナーは、今年はとみに品ぞろえがいい。安い・デカイ・カラフルなテントが並んでいる。登山店で見る山岳テントと違い、居住性の良さを売り物にしている商品が多い。
「選ぶにはどこを見ればいいか?」という質問をよく受ける。「やはり大きくて家族でゆったり使えるものがいいんでしょうか?」と。
私は、1日中テントの中で遊んでいるなら、大きなテントがいいでしょう、と答えることにしている。「キャンプしよう」とよく言うが、キャンプが目的というのは不思議な感覚だ。
例えば、釣りが好きで気持ちいい渓流で朝一番から釣りたい。それなら前の晩からキャンプして、一番いい釣り場をキープしたい。「いい釣り場をキープするためのキャンプ」だ。
父子で星空を眺めたいとすると、日帰りでは、ゆっくり眺められないし、旅館では周囲が明る過ぎる。「星を見るためにキャンプする」のである。
アウトドアにはたくさんの楽しみがある。それをするためにキャンプをするのが本当の姿ではないだろうか。キャンプは目的ではなく、手段なのだ。
その目的に応じて、テントも変わる。釣りのために川の近くでキャンプしたいなら、大きくてカラフルなテントは張れない。場所が狭いし、鮮やかな色で魚を驚かしていては釣れるものも釣れないだろう。
まず、お気に入りの遊びのイメージをふくらませていただきたい。そこから手段としてのキャンプの楽しさが始まる。
1995,7,6
文:石井研二 絵:石井光