アウトドアへの招待
マウンテンバイク[1]

「けもの」感覚を味わう
新緑のころ、野山の空気を楽しみたい。歩くのもいいが、よりフットワークを広げるならMTB、マウンテンバイクがお勧めである。
CMに登場するような場所で乗るのは技術も必要だが、郊外や近くの野山で風を感じる分には実に楽。ロードレーサーのように、スピードを出さなければ恰好がつかないこともない。
カヌーが「水鳥」の目線を体験するものだとすれば、MTBは「けもの」になった感覚を味わう道具だ。
正式にはATB(オールテラインバイク、全地形向け自転車)と呼ぶ通り、その太いタイヤで変化に富んだ山道をしっかりつかむこの自転車は今や大人気。小さな子供たちが乗る自転車も、半分ぐらいこのタイプになったように思える。
ゴールデンウイーク中にも、車の屋根にこれを取り付けて山に向かうグループが多く見受けられた。
その力強くおしゃれなスタイルから、若い人専用の自転車だと思っている向きもあるかもしれない。が、本当はそうではない。
MTBの真価のひとつは、その変速にある。
前後のギアを組み合わせ、21段ぐらいの変速を作るものが一般的。これを駆使すれば、平坦な道でも登り坂でも同じリズムでこぎ続けることができるわけだ。
だから、強引なパワーで登り坂を越えられなくなってきた中年に優しい自転車、と言ってもいいだろう。
山道だけではない。街中で自転車に乗ると、都会には意外に段差や登り下りが多いことに気付く。“ママチャリ”と呼ばれるタウンサイクルはフレームが弱く、車道と歩道の段差でもきつい。MTBは街乗りにも性能を発揮するのだ。
日本で売られているのはアメリカ西海岸風の色づかいが多いが、照れずに一度乗ってみると、その良さを発見できる。
1995,5,11
文:石井研二 絵:石井光