スノーキャンプ[1]

静かな銀世界の楽しみ
雪景色には独特の静かさがある。FMラジオでロックを流すようなゲレンデへワイワイ出かけると、静かさに感激することもないが、雪の上でひと晩泊まってみると、よく分かる。
シンとした空気の中で、音のない音に耳を傾けながら、ウイスキーのお湯割りなど、飲む。出発前「なんでそんな寒いところでキャンプなんか」と渋っていた人もきっと納得の、いい時間がそこにある。
スノーキャンプの醍醐味は早朝だ。寝袋からはいだして、火を起こす。銀世界に朝の光が差すと風景がダイナミックな変化を見せる。雪山の表情はどうしてあんなに豊かなのだろう。スキーを履いて、さっそく散策もいい。ちょっとした斜面でもあるなら、ソリ遊びもいい。雪の中だと、みんなが子供に帰ってしまう。
雪の上で快適なキャンプをするコツは、雪をしっかり固めること。それをせずに新雪の上にあわててテントを張ると、いかに優秀なテントでも、居住性なんてなくなってしまうのだ。
歩くと膝までもぐり込むような場所でも、イラストのようにみんなで肩を組んでドシドシ踏み固めれば、しっかりした土台になる。
車から降りて「寒い!」と言っているころだから、体を暖めるのにもちょうどいい。底のしっかりした靴でドシドシ歩こう。それからテントだ。下から冷えるから、グラウンドシートと一緒に、新聞紙やプチプチの梱包材を敷くといい。
降る雪を避けたいからと、木の下にテントを張ると、枝からドカッと雪の塊が落ちてテントがつぶされたりするから、注意。
冬山用のまともなテントなら、どれくらいの重さに耐えるか表示されている。
また、テントは気密性が良いように思えないが、中で火を炊くと一酸化炭素中毒しやすいからこれも注意。やはりベテランほど換気がうまいようだ。
そうした注意をして快適な環境を作れば、夏の混んだキャンプ場ではけっして得られない豊かな一日が約束されるのだ。
1996,2,1
文:石井研二 絵:石井光