夏休みの冒険[1]
コンパス片手に地図作り
梅雨も終わり、あっという間に夏休みになってしまった。冒険の時間がやってきた。お盆に郷里に帰って、子供たちが初めての自然と出会う機会も多いだろう。親としては、そんな時、いい冒険をセッティングしてやりたい。冒険とは危険なことをすることではない。自然の中で神経を澄まし、自分を試し、自然の驚きと達成感を味わうことだ。
短いお盆だが、実家へ帰って意外に時間をもてあましているお父さんも多いだろう。何となくテレビを見るということになっている気がする。ここはひとつ、子供と一緒に実家周辺を探険しようではないか。
少し男の子向きすぎるかもしれないが、私が昔から好きなのが「地図作り」。必要なものはコンパスと紙と鉛筆だけである。方法は簡単で、「今立っている場所からあの一本杉までの方角は?」「この地蔵の辻の曲がっている角度は?」「地蔵から分かれ道まで何歩?」と、コンパスと歩測、時間などを細かく記録する。
正しい地図を作るのが目的ではない。測ったものや見たことに忠実な方が楽しいし発見が多いので、市販の正確な地図は持っていかないこと(迷子になるほど不案内な土地なら別だが…)。
子供たちが面白いのは、その中で次々に発見していくところだ。見つけたものに自分だけの名前をつけていく。あの山は何の形に似ているから始まって、地図がざっとできるころには、すっかり自分たちの物語を作り上げていたりする。
子供たちは、何を測るかを発見する天才でもある。川の幅、神社の石段の数、鳥居の数。しばしば地図を作るのには関係なさそうな計測が続くが、子供と一緒に寄り道を楽しみたい。そうした興味に魅かれて、これまで見ていなかったものが目に入って来る。それが素晴らしいのだ。
小川があれば、それは地図作りの旅のハイライトとなる。川筋に沿ってのぼってみよう。ジャブジャブと渡ってしまうのも楽しい。
自由な動きを保証するには、ゴム引きブーツで出かけるとか、虫よけスプレーをするとか、いくつか準備がある。お父さんの上手なセッティングに期待したい。
1996,8,1
文:石井研二 絵:石井光