アウトドアへの招待
シーカヤック[2]

目的に合わせて選ぼう
昔、「海洋少年団」に属していた。ロープワークを覚えたぐらいだが、いい思い出になっている。が、カッター訓練は別だ。ぽってりしたボートに、十数人が左右一対で乗り込み、みんなで漕ぐのだ。
下っぱ船乗り気分でオールを握るが、何しろ全員の息が合わない。グルグル回ったりして、ちっとも推進力にならない。
思うように動かないわ、先生に怒られるわ、マメはできるわ、暑いわで、子供心に「こんなことをやっていたら、みんな海が嫌いになる」と思っていた。海を愛する心には訓練より、自由に移動する楽しさを与えることが先決だ。そこでシーカヤックである。
シーカヤックは細長い。タライのようなカッターより、スムーズに進む喜びにあふれている。一般に川のカヌーより鋭いスタイルを持っていて、何だか「初心者お断り」の雰囲気を漂わせている。損をしているように思う。
海には川や湖の比ではない風が吹き、波があるから仕方ない。波風の影響を受けにくく、安定性と直進性をと考えると、切っ先鋭いデザインになる。
カヌーを施設に寄贈する財団などは、よく道具の種類を知った上で選んでいただきたい。でないと、子供の施設に競技用の難しい艇が贈られているといった不幸を耳にすることがある。
シーカヤックにも使う目的があり、ツーリング、長距離、探検用でそれぞれスタイルも違うのだ。私などのぐうたらアウトドア・ファンが興味を持つのは短距離ツーリング用で、荷物の積載能力の多いものになる。
中には、広いコックピットで自分と子供が一緒に乗り込めそうなものもある。うちの息子には、何とか自由な海を体験させ、好きにさせてやりたいものだ。
1995,8,10
文:石井研二 絵:石井光