スキー[3]

心躍る動物の足跡探し
子供のころ、雪が積もると誰よりも早く学校へ行って、校庭に足跡をつけるのが楽しかった。人の足跡をたどって歩いて行ったり、これは誰の足跡かと考えてみたりするのも想像力を刺激することだった。
雪山では、人以外の足跡を見つける楽しみがある。ゲレンデなどでも、長いリフトに乗っていると、眼下にとても滑って入れないような新雪の急斜面などがあって、そこにウサギだろうか、点々と足跡がついているのを見つけて何だか楽しい気分になることがある。
今は足跡や糞の形状などを収録した図鑑が出ているから、そうした本をお供に雪山を歩く。もちろんクロスカントリースキーの間に、痕跡を発見することもあるだろう。動物が残した痕跡を探して、どんな動物がいるか、その生態を楽しむことを「アニマル・トラッキング」という。
もちろん冬に限った楽しみではないが、雪の上には足跡も残りやすいし、新雪の中に続く足跡を追うというのは心躍るものがある。
持っていくものは図鑑と双眼鏡やカメラ、それにフィールド・ノートだ。鳥の羽が落ちていたりすると、その場でページを広げて貼り付けたり、場所を記録したりできるような道具をこまごまとデイバッグに入れておくといい。
早朝、動物たちの捕食活動が活発な時間帯が好適。彼らを脅かさないために、赤い色を着るのは避けたいが、仲間とはぐれないよう注意を要する。足跡に夢中になっていると、居場所が分からなくなりがちだ。
別に動物の生態を調べてどうしようというのでもないが、足跡探しは自然と仲良くなるいい入り口。去年と同じ山、同じ場所でまた同じような足跡を見つけたりすると、「帰ってきた」という感覚がわきあがる。
ノートにスケッチした足跡がたまっていくと、自分が地球に残した足跡をたどる素敵な記録になっているはずだ。
1996,1,25
文:石井研二 絵:石井光