サバイバル[2]

保存食もおしゃれに
アメリカ西海岸最大規模のアウトドア見本市へ行ったことがある。1500社もの関連企業が集まっていて、商品をザッと見て歩くだけでも時間がかかる。
企業といってもアウトドア専門会社は、趣味がこうじて仕事になったという感じの中小企業が多い。これは日本もアメリカも同じだが、その品目にはいささか違いがあるようだ。
日本では売れないものに、フリーズドライの食品がある。アウトドア店に少しだけ並んでいるが、日本のキャンプはまだ料理だけが楽しみというところがあり、簡単な食品はうけない。
アメリカの人は、料理の時間を短縮して山を歩く時間をたっぷり確保しようという発想のようだ。
お湯をかけるだけの食品といっても、よく売れるアメリカでは味もバラエティー豊か。七面鳥と野菜のブラウンライスとワイルドライスをサワークリームソースで和えたピラフなんて複雑なものまである。パッケージも山の美しい夜をイメージさせる、なかなかきれいなものが多い。
面白いのは、キャンプ用食品を作っている中にも、元々災害用の保存食、サバイバルフードの会社があるということである。
西海岸はよく大きな地震にみまわれる。そうしたとき、会社に食品が備蓄してあると、家に帰れなくなった社員が助かる。というわけで、企業備蓄用の保存食を作る会社が多いのだが、それがキャンプ食品に進出したりするわけである。
イラストはサバイバルフード出身のキャンプ食品メーカー、アルピネアー社の「サタデイナイト・オン・ザ・トレイル」、つまり山道で楽しむ土曜の夜、という名の商品である。コンパクトな袋の中に二人前のチキンパスタとブロッコリスープ、セサミパン、チョコレートフォンデュで食べるイチゴまで入っている。土曜の夜を野外で過ごすカップルのためのディナーだ。
日本でもおしゃれで準備が簡単で生ごみの出ない食品が増えれば、キャンプの時間はもっと豊かになると思うのだが。
1996,2,15
文:石井研二 絵:石井光