やってみようアウトドア
昆虫採集と飼育[3]

無理があるホタルの放流
先日行った兵庫県の「とちわら子供自然体験キャンプ場」では、敷地の真横を流れる清流にホタルが無数に舞うそうだ。
ホタルは日本に50種以上いるが、代表格で大型のゲンジボタルは清流にしか棲(す)まない。最近、清流を売り物にする地域で競ってホタルの放流行事が行われる。
まさに清流の証明というわけだが、京都・祇園の飲み屋街を流れる高瀬川でも群れ飛ぶのが見られるから、自然とは意外なもの。ヘイケボタルは人里近いところに棲むのが特徴だ。
ホタルの美しさは、人工の光のない野にあってこそ輝く。熱を持たないあの光は、人間の力では再現できないものだ。
毎年ホタルを放流する観光行事というのも悲しさを感じさせる。根付かないのはどこかに無理があるのではないか。里山学者によれば、水がきれいならホタルが必ず棲むという単純なものではない。
幼虫期のエサとなる巻き貝カワニナがいたり、サナギになるときもぐり込む土があったり、バランスが大切だ。人気があって皆がゲンジボタルを放流するが、もともといない種を根付かせるのは難しいそうだ。
昼間、川に入って底を見てみよう。エサになる巻き貝や幼虫の姿などが確認できるかもしれない。棲む環境全体に親しんでみたいものである。
1997,7,24
文:石井研二 絵:石井光
野外を楽しむインターネット・ホームページ
守山市ほたるの森資料館
http://www.lake-biwa.net/hotarunomori/
ゲンジボタルの里、滋賀県守山市の資料館のページ。普通の観光案内以上に街の魅力を伝えてくれる。