1995,04,13掲載
ピクニック[2]

たんぽぽの綿毛

スケッチで草花と会話

 春の行楽シーズン。遊園地からは新しい絶叫マシンなど、にぎやかな話題が聞こえてくる。いつも新味を出さなければ若者には来てもらえないようだ。

 しかし、アウトドアでは事情が違う。

 全く知らない新しい場所に行くのもいいが、何度行っても楽しめる、お気に入りの場所を見つけたい。これからは日本のレジャーも、同じ場所を愛するようなスタイルになるだろう。

 自然の知識がなくても、「この木の枝ぶりが好きだ」といった感覚さえ持てれば問題ない。行くたびに、季節につれて変わるその木の表情だけで、ずいぶん楽しめる。若木であれば、親のような気持ちでその成長を見続けられるだろう。

 野原でじっくり時を楽しむなら、いい椅子を選びたい。私の愛用は木の折りたたみ式。とりはずして洗うこともできるキャンバス地の座面が、身体をゆったり包んでくれる。

 スケッチブックやノートと色鉛筆があれば、自然はずっと身近になる。

 人に見せるのではないから絵の上手下手は気にしない。普段おおざっぱに見過ごしていた風景に、目をとめるためなのだ。

 どれも同じようなタンポポも、セイヨウタンポポは花を包む緑の部分(包片)が反り返り広がっていて、日本のタンポポの包片は花についている。そんな小さなことも、絵にしてみると気付くかもしれない。

 タンポポは春の野への案内役。自然の知識を全部仕入れるのは無理でも、タンポポのことなら知っているということにすれば、野外の楽しみはぐっと広がる。

 セイヨウタンポポは食用として日本にやってきたとか。健胃成分もあるというから、食べてみるのも一興だ。ただしそのままではかなり苦いので、さっとゆでておひたしに。



文:石井研二 絵:石井光