アウトドアへの招待
ハーブの楽しみ[2]

試して香りを覚える
染め物などに幅広く使えるハーブ、スパイス。だが、アウトドアでの楽しみといえばクッキングだろう。
日本では、アウトドア料理といえばカレー。ひとつの鍋で調理でき、ひとつの器で食べられるので便利だし、香りが食欲を誘う。
明治時代、舶来の高級料理だったカレーが野外に普及したのは、その便利さから陸軍が採用し、ボーイスカウトから学校教育キャンプに受け継がれたもの。
汗をかいて体を冷やすためにインドで発達したカレーが、体を冷やしてはいけない山中で好まれるのは不思議。スパイスは健胃成分を含むから消化にはいいのだが。
ルーのカレーでも、煮込むときカイエンヌペパーやシナモン、ミントなど、好みのハーブを加えるといい。オリジナルの風味が楽しめるし、料理をしているという気分が盛り上がる。
スパイスが男の料理に好んで使われるのは、実際の味や香りより、いろいろ加えるのが化学の実験風で面白いからに違いない。
わが家では、油絵の具の箱を改造した手作りスパイスラックが活躍している。ちょうど箱の深さがスパイスびんの直径に合い、28種のスパイスがずらっと並ぶ。彩りを眺めるだけでキッチンに立つのが楽しくなる。
絵の具箱にはもともと持ち手がついているから、フタを閉めて車に積めば、そのままキャンプに持っていける。野外でも香りのバラエティーが楽しめるわけだ。
川魚の香草焼きやスープ、ドレッシングに紅茶など、ハーブの手軽な応用範囲は限りない。いろいろ試して香りを覚えることから始めたい。それが、焼き肉ばかりのアウトドア料理を脱却するかぎだ。
1995,6,15
文:石井研二 絵:石井光