アウトドアへの招待
ハーブの楽しみ[3]

自然の色で優しく染める
化学染料によるアレルギーなどが話題になるにつけ、人気が集まっているのがハーバル・ダイイング。ハーブ染めである。
ミントやパセリ、オレガノにレモン・バームと、食卓でもおなじみのハーブの新鮮な葉や茎を使い、まずは染液づくりからだ。ホーローなどの鍋を使い、ハーブを入れて沸騰後30分以上中火で煮出す。それを布で漉したのが染液となる。
一度洗って汚れを落とした毛糸を、この液で煮て下染めする。染め液はまだ捨てないこと。ぬるま湯で洗った毛糸を、みょうばん液で煮ると色が定着する。
もう一度ぬるま湯で洗い、いよいよ本染めだ。先に使った染液にもう一度毛糸を入れて加熱する。煮る時間は3回とも40、50分程度か。終わったらまたぬるま湯で十分に洗って、乾燥させれば出来上がりである。
手間なようだが、暇な日曜の午後などにお茶など飲みながら、のんびり進めると心地いい。あわてて編まず、半年ぐらい放っておくと、色がより安定する。ズボラな人間に向いた趣味、といえるかもしれない。
今ごろから始めてクリスマスに編む、といった感覚でやってみると楽しい年末を予約しているようでいい。
タンポポの花なども優しい色を与えてくれるようだ。まあ、初心者はぜいたくを言わず、少量ずついろんな素材を使って、どんな色になるか実験するつもりで楽しんでいればいいだろう。
趣味の染色店などで求めて、みょうばんの代わりに鉄や銅などを使うと、同じハーブでも違う色が出る。
そうした微妙さが、天然モノの不思議で楽しいところである。
1995,6,22
文:石井研二 絵:石井光