アウトドアへの招待
晩秋の野外料理[3]

ムード一変、「ナン」に挑戦
新しい料理に挑戦したい。私がそう思うのは秋から冬にかけて。やはり街で食べる山の幸に刺激されるのだろう。単純なものである。
さて、私が実際にやって意外なほど簡単でうまくいったのがインドの素朴なパン「ナン」である。いつものカレーのムード一変してくれる一品といえる。
粉をこねたり寝かせたり、仕込みにそれなりの時間がかかるので、ギリギリまでスポーツに時間をまわしたいなら、家で前夜仕込んだ生地をラップでくるんで持っていくこと。
ただ、粉をこねるのは身体を温めるのにもいいし、みんなでわいわいやるとおいしさも格別。
カレーの仕込みが終わって煮込み態勢に入ったら、素材を混ぜ、こねる。ちょうどカレーの煮込み具合ともタイミングが合う。
強力粉200グラム、薄力粉130グラム、ベーキングパウダー12グラム、牛乳165グラム、卵ー個、砂糖、塩、重曹、バターを準備し、鍋などでよく混ぜてからこねる。野外で一番力の入るこね方は、地面にバーベキュー鉄板を置き、体重をかけてグイグイやること。折りたたみ式テーブルでは頼りない。
みんなでわいわいといっても、おしゃべりに夢中になるのは禁物。短時間で要領良くこねるのが一番だ。
あとは記憶に従い、ナンらしい形にして、よく熱した鉄板の上に油をひかずに載せるだけ。すぐにキャンプは芳しい香りに包まれるだろう。
意外に膨らむので、少し小さ過ぎるかなというぐらいにまとめるのがコツ。フォークで全体を刺しておけば、一部だけ膨れてしまう失敗が防げるだろう。
簡単で雰囲気の出るナンに、ぜひ一度挑戦してみてほしい。
1995,12,7
文:石井研二 絵:石井光