スキー[2]

自然満喫クロスカントリー
今はいくらか解消されたが、スキーリフトの乗り場というのはどうしてあんなに難しく造られているのだろうか。狭いところにひしめき合って並ばなければならないし、検札の辺りに急な上りや下りの坂があったりして、初心者を乗せないために設計されているとしか思えないリフトもある。
スキーとは滑って降りてはリフトで上がるものだった。しかし、歩くスキーやクロスカントリースキーが流行の兆しを見せ始め、少し変わりそうだ。
複合競技での日本人選手の活躍なども、ダウンヒル以外のスキーへの関心を広げているのかもしれない。
かかとが自由になる専用の金具をつけ、自由に坂を上り、下りして進むクロスカントリースキー。その魅力は、スピーカーからFMラジオのロックが流れるような昨今の人工的なスキー場とは違う、冬の自然を満喫できるところにある。
リフトや食堂で長い行列を作る必要もない。目の前に広がるのは、他の人がまだ入っていない、キラキラ光る雪原である。うさぎの足跡がある。遠くで枝から落ちる雪の音が聞こえる。
先を急ぐ必要はない。気に入った場所でお茶を飲み、スケッチしたり写真を撮ったり。初心者では長距離ツアーというわけにはいかないから、逆にゆっくり周囲の自然を楽しめばいい。
関西からだと、大山を見上げる鳥取県の桝水高原スキー場など、クロスカントリースキーのレンタルが受けられるスキー場もあるので、挑戦してみたい向きにはおすすめである。
もっとも、どこからでもゲレンデをはずれればいいというものではない。地元の人の迷惑になる場合も多いので、十分な下調べと計画が必要だ。いきなり欲張った計画を立て、戻って来られなくなったりしたら大変だ。むき出しの自然は優しいばかりではない。無理をせず、少しずつ楽しませてもらうというのが良さそうである。
1996,1,18
文:石井研二 絵:石井光