夏休みの冒険[4]

カヌー第3の波「ロデオ」
カヌーに挑戦してみたい。古い友達の女性がカヌーショップを開いた。摂津市にできた「KAI」というお店がそれだ。
前の会社を退職し、夫婦でニュージーランドへ行っていたのだという。向こうでカヌーの魅力にとりつかれ、帰国後、カヌーで激流にチャレンジする「ロデオ」という競技の選手になった。夫婦で多くの大会に出場、上位入賞を果たしている。その魅力をもっと広げたいと、指導を軸に艇の販売もするお店を開いたわけだ。
さっそく行ってみると、ぐっとたくましくなった彼女が迎えてくれた。
最近人気が伸びてきたというこのロデオ競技、なかなか面白そうだ。白波を立てる急流にこぎだし、流れの中でジャンプしたり、スピンしたり。かっこよくジャンプを決めると歓声や口笛が飛び交う。
ちょっとサーフィンやエアリアルスキーの大会のようなノリで、これまでの体育会系の競技カヌーとはかなり違う世界だ。
白波の立つ流れを、ホワイトウォーターと呼ぶ。残念ながら日本では十分な流量のあるホワイトウォーターが少なく、上級者が楽しめるフィールドは少ない。それでも彼らは急流を求めてリバーツーリングをし、早瀬に入るといろいろ技を使って遊ぶのだという。
日本のカヌーは体育会系の競技カヌーとのんびり楽しむレジャーカヌーに分かれて発展してきた。ロデオの世界はどちらとも違う。第3の波だ。
「競技にはなっているけど、気持ちはレジャーですよ」と彼女は言っていたが、かなりチャレンジ精神旺盛な新型のレジャーだと思う。腕の力だけではなく、ジャンプするときには足の筋肉も使う、なかなかの全身運動のようだ。
けっこう好きな世界だ。何より、こういうスタイルでカヌーを始めれば、ただオープンデッキののんびりレジャーカヌーから始めるよりも上手になれそうだ。
おしゃれなイメージだけで我流で川にこぎだし事故に遭う無謀なカヌーファンが増えていると聞く。しっかりと指導を受けて、流れを理解し、対処できるようになってから、ツーリングに出るようにしたい。
1996,8,22
文:石井研二 絵:石井光